トルコ人物語

トルコ人の写真は撮ってないので、トルコの様子とともにお楽しみください
トルコ人の写真は撮ってないので、トルコの様子とともにお楽しみください

「トルコには親日家が多い」

そう聞いて期待に胸を膨らませながら、でもちょっとだけ警戒しながら訪れたトルコ。
そこで実際に出会ったおじさん達の物語。

[良]👍朝食25リラを10リラにまけてくれるおじさん

トルコの一般的な朝食
トルコの一般的な朝食

朝食を求めて安い食堂を探しに出た朝の話。

イスタンブールのほとんどが観光客向けのレストランで、朝食が1人20リラ(約600円)前後する。
パンを買えば安いのだが、豪華だと言われるトルコの朝食を食べてみたかった。
僕たちは、なんとか安い店はないかと探すつもりでいた。

ところが1軒目に入ったレストランで、僕らは朝食を食べることになった。

ふらっと店内に入ると、どうやらビュッフェ・スタイルの朝食を提供しているようだった。
これは僕たちには縁がないなと思いながら念のため価格を尋ねると、25リラ(約750円)だと言う。
やはり縁がないと店を出て歩き出すと、店主が店の外まで追いかけてきた。

「10リラでいい、食べていってくれ」

法外な割引ぶりに僕たちは耳を疑った。だが、彼は確かに10リラ(約300円)でいいと言う。
怪しい、いきなり半額以下だ。もしかしたら支払いの段で10ユーロ(約1200円)だと言い出すのかもしれない。
疑心暗鬼になりながらも、僕たちはそこで食べてみることにした。

そのレストランは流行ってないわけではなかった。
それなりに良いホテルに付属しているレストランという感じだ。
裕福そうな家族連れが、カップルが、数種類のパン、数種類のチーズ、いくつかのおかず、
サラダにフルーツと、トルコの朝食ビュッフェを楽しんでいた。

僕たちは餌を与えてもらった野良猫のように、おそるおそる、ゆっくりと、しかし皿いっぱいに料理を取った。
お代わりするごとに10リラだと言い出すのではなかろうかと、内心ビクビクしながら腹を満たしていった。

食べ終わって2人分の代金20リラを渡すと、彼は「ありがとう」と言った。

なんてことはない。彼はただの良いおじさんだったのだ。
恐らく10リラというのは宿泊客向けの価格で、僕たちのような外からきた客には25リラで提供しているのだろう。

それでも宿泊客向けの価格にまけてくれたおじさんに伝えたい。

「疑ってごめんね、ありがとう」と。

[良]👍どこまでも道案内してくれるおじさん

イスタンブールのトラム。いわゆる路面電車。
イスタンブールのトラム。いわゆる路面電車。

市内から離れた美術館で綺麗なモザイク画を見た帰りの話。

公園の近くでトイレに行きたくなった。
案内板があったので、従って進むと、そのトイレは工事中で使えない様子。
途方にくれて彷徨っていると、おじさんが声をかけてきた。

「どうした、なにを探しているんだ?」

トルコ語だったので何を言ってるのかは分からなかったが、恐らくそういうことだろう。
トルコ語でトイレ、すなわち「トゥアレッ」と叫ぶと、おじさんはついて来いと手招きをした。

怪しかったが、切羽詰まっていた。藁にもすがる思いだった。
おじさんについていくと、そこは地下駐車場のようなところだった。
いよいよ騙されたかと思っていると、おじさんはそこにいた男と言葉を交わし、こっちを振り向いた。
「ここだ」とおじさんが指差した先を見ると、そこにはトイレがあった。

親切なおじさんに感謝を告げ、トイレに入った。
用を済ませてトイレから出ると、まだあのおじさんがいた。
軽く会釈して横を通り過ぎようとすると「ホテルはどこだ」と聞いてくる。

なるほど、そうやってタクシーか何かに乗せるパターンだな。
警戒しつつ「シリケシだ」と言うと、おじさんはついて来いと手招きをした。

タクシーに乗せられそうになったら逃げよう、僕たちはトラムに乗ってきたから帰りもトラムを使うんだ。
そう警戒しながらおじさんについていくと、到着したのはトラムの駅。
おじさんはシリケシにはトラムで行けるぞと教えてくれた。
知っていたけれど、わざわざここまで送ってくれたことに感謝するとしよう。

ところが、僕たちが改札を抜けると、おじさんも入ってくる。おかしい、どこまで付いて来るつもりだ?
あああ、向かい合わせの席に一緒に座った。まさかホテルまで付いて来るんじゃないだろうな?
警戒してると、おじさんがトルコ語で話しかけてきた。

僕たちはトルコ語が分からないので、スマートフォンに入れていた翻訳アプリを使っておじさんと会話した。
おじさんは、日本のことやトルコ旅行のことについて色々と質問してきた。
そして、トルコは好きか?という話の途中で、目的の駅に着いたからと、降りていった。

なんてことはない。彼はただの世話好きの、良いおじさんだったのだ。
僕たちが日本人だと分かると、翻訳アプリを通して会話ができるとなると、目を輝かせて話を振ってきた。

あのおじさんにまた会うことがあったら伝えたい。

「疑ってごめんね、ありがとう」と。

[良]👍宿泊費を1泊分奢ってくれるおじさん

トルコの首都アンカラにある表参道みたいなところ
トルコの首都アンカラにある表参道みたいなところ

バス乗り継ぎの都合で、1泊のつもりで立ち寄ったトルコの首都アンカラの話。

サフランボルの次は、カッパドキアのあるギョレメに向かうつもりだった。
バスを調べてみるとギョレメ行きの直通便はない様子。
いや、あったのかもしれないが、情報を見つけることはできなかった。
なんにせよ、僕たちはその中間に位置するアンカラを経由することにした。

「君たちはなんて綺麗な眼をしているんだ!」

アンカラの宿にチェックインすると、受付にいた男が突然そんなことを言いだした。
胡散臭すぎる。突然こちらを褒めてきてフレンドリーに接してくる奴は、大体ウラがあるのだ。
そんな見え透いた嘘で接近してきても、僕たちは騙されないぞ。

ドミトリーのベッドに荷物を置いてひと休み。
夕食がてら散策に出かけようとすると、「ここを出た後どうするんだ?」と、先の男に声をかけられた。
僕たちはアンカラに1泊だけしてギョレメに向かうつもりだと伝えると、彼はとんでもない提案をしてきた。

「僕がお金を払うからもう1泊してくれないか?」

意味がわからなかった。いや、意味はわかったが、意図がわからなかった。
突然の提案に面食らいつつ、もし無料でもう1泊できるのなら、そんなありがたい話はないと思った。
アンカラは通過するだけのつもりだったが、ローマ時代の風呂の遺跡など、気になる観光地もチラホラとあったのだ。

本当にいいのか?つまり僕たちは無料でもう1泊できるのか?と何度も確認した。
彼は、そうだと言った。理由を聞くと「君たちのことが気に入ったんだ」と言う。
怪しかったが、そこまで言うのなら泊まってやろう、奢られてやろうと、僕たちはその提案を受け入れることにした。

外出している隙を狙って、僕たちの荷物から貴重品を抜き取るつもりかもしれない。
食事に誘われたら何かと理由をつけて断ろう、お酒なんて絶対ダメだ。
そう警戒していたけれど、そんな物騒な事件は全然発生しなかった。
彼に誘われるまま卓球に興じ、彼が奢ってくれたジュースを飲みながら夜まで語り合った。

日本の文化に興味津々な彼。

喜多郎って知ってるか?彼の音楽がとても好きなんだ。
そういえば日本の宗教ってどうなってるんだ?
トルコは好きか?君たちの旅の目的を聞かせてくれ!自分探しか?
自分が存在する意味を考えたりするか?

と、質問がだんだん哲学的になってきたところで、彼が眠くなってお開きになった。
昨晩は夜勤でよく眠れなかったらしい。

なんてことはない、彼は日本好きの、とびきり良いおじさんだったのだ。
おじさんとは言っても僕より若い、26歳だと言っていた。

1泊の宿泊費66リラ(約2000円)とジュースを奢ってくれた彼に伝えたい。

「疑ってごめんね、ありがとう」と。

[良]👍トイレを貸してくれた消防署のおじさん

1回1リラのスクラッチくじに挑戦。もちろんハズレ。
1回1リラのスクラッチくじに挑戦。もちろんハズレ。

アンカラ観光中、道に迷った上に、トイレに行きたくなった話。

「メルハバ!」

突然、頭上から声が聞こえてきた。
「メルハバ」とはトルコ語で「こんにちは」に当たる言葉だ。
トルコを旅していると至る所で「メルハバ」と声を掛けられる。
しかし、頭上から声を掛けられたのは初めてだった。

声が聞こえてきた方を見上げると、窓からおじさんが手を振っていた。
ちょうど道に迷っていたし、トイレにも行きたくなっていた。道を尋ねるついでにトイレを貸してもらおう。
公共のトイレでも無いところでトイレを貸してくれなんて、ずいぶん図太くなったものだ。

トイレを貸してくれ、それから道を教えてくれ、と中に入ると、どうやらここは消防署らしかった。
火事の発生していない今、暇そうなおじさんは、僕たちにチャイを飲んでいかないかと提案してきた。
トルコ人の親切に慣れてきていた僕たちは、お言葉に甘えてご馳走になることにした。

おじさんはこの消防署で36年間も働くベテラン消防士だった。あと1年で定年退職するのだという。
何度か難しい現場も担当したのだろう。表彰されたらしく、賞状の写真を誇らしげに見せてくれた。

格好いいと思った。このおじさんのこの手で、きっとこれまで何人もの命を救ってきたのだ。

日本の話もした。彼もトルコ語で話すので、翻訳アプリと身振り手振りのコミュニケーションである。
彼のおじいさんが戦時中日本に行ったことがあるようなことを言っていた。
「アメリカ、ヒロシマ、ボム」と言いながら悲しそうな仕草をしたので、おそらくその悲劇に同情してくれているらしかった。

ポットいっぱいのチャイ、グラスにして1人2〜3杯のチャイを飲み終わったころ、僕たちはそろそろ観光に戻るよと席を立った。
1時間以上話し込んでいたかもしれない。時間は気にならなかった。
彼はメモ帳を取り出し、「次にトルコに来た時は訪ねてくれ」と、住所を書いて僕たちに渡してくれた。

ほらね、やっぱり彼も良いおじさんだった。またトルコにくることがあったら訪ねてみよう。

「ありがとう、おじさん。また来るね。」

[悪]👎タクシー代すり替えおじさん

「おう、乗ってけよ」彼はそう言って、僕たちを騙した(画像はイメージです)
「おう、乗ってけよ」彼はそう言って、僕たちを騙した(画像はイメージです)

トルコに到着してすぐ、空港からバスで市内に移動後、宿に向かうために乗ったタクシーでの話。

「おーっとっと、ここはタクシー乗り場で、順番ってやつがあるんだ。こっちにのりな!」

車通りの多い道路で手を挙げてタクシーを止めた直後、後ろから他のタクシードライバーに声を掛けられた。
少し怪しかったが、それがルールなら仕方がない。折角とめたタクシーも走り去ってしまった。
おじさんについて行き、並んでいるタクシーの先頭に停めてあるタクシーに乗り込んだ。

乗る前に何度も目的地を告げ、いくらだと確認する。この旅で身につけたタクシー利用術だ。

目的地を告げ、相手がYESと言っても安心してはいけない。
名前が似ているだけの、全く見当違いの場所に連れて行かれることもある。
料金もそうだ。トルコではリラのほかにユーロも流通している。
1ユーロは約4リラだ。そこを明確にしないと実に4倍の料金を請求されることになる。

宿の位置をお互いのマップで確認しあった。
料金についてはメーターを使うがおそらく40〜50リラ(約1200円〜1500円)くらいだろうと言う。
少し高い気もしたが、深夜だったし、この国の物価も分からない。その上、通貨の単位に頭が追いついていなかった。
他のドライバーに40ユーロだと言われ「高すぎる!」と言って別れてきたというのもあったかもしれない。

タクシーは、イスタンブールの隙間を縫うように、細い道をグネグネと進んでいった。
多少、いや、かなり運転が荒いが、無事に宿まで送り届けてくれればそれでいい。
道中「あの建物がナントカだ、あの橋がナントカだ」「40ユーロはぼったくりすぎだな、ウケる」
などとフレンドリーに話しかけてきた。親切なおじさんに当たったものなだと思った。

その日宿泊した部屋の近くのファミリーマーケット
その日宿泊した部屋の近くのファミリーマーケット

宿の前に到着すると料金は54リラだと言う。
あいにく小銭を持っていなかったので、50リラ札を1枚と、5リラ札を1枚、つまり55リラを財布から取り出して渡した。

色々教えてくれたお礼だ、1リラはチップとして取っておいてくれ。
そう思いながらタクシーを降りようとすると「足りないぞ」と呼び止められた。

おや?僕は55リラ渡したぞ?1リラのお釣りを返してくれると言うならまだしも、足りないとはどう言うことだ?

おじさんの方を見ると、5リラ札を2枚持っている。
むむむ、財布の中で見間違えちゃったかな?すまんねおじちゃん。
5リラ札を2枚受けとり、改めて100リラ札と5リラ札を渡し、50リラのお釣りを受け取った。

それにしても50リラと5リラを見間違えるなんて、寝ぼけてたんだな、と思ったところでハッとし気づいた。

空港の両替所でドルを交換して受け取ったのが50リラ札2枚と5リラ札を1枚。
バス代30リラを支払うために50リラ札を1枚渡して20リラのお釣りを受け取った。

つまり、財布の中に入っているのは50リラ札、20リラ札、5リラ札をそれぞれ1枚ずつ。
あとはATMで引き出した100リラ札が数枚だけ。5リラ札を2枚なんて出せるはずがなかった。
そして、今、財布の中には50リラ札が1枚もない。

やられた!寝ぼけていたのは55リラ支払った時じゃない、5リラが2枚と言われた時だ!

僕たちはトルコに到着して早々詐欺に遭った。

トルコ人の親切を素直に受け取れなくなったのは、この事件が原因に違いない。

[悪]👎 靴磨き押し付けおじさん

靴磨きおじさん遠景。「商売道具」を持って、この辺りをウロウロしている。
靴磨きおじさん遠景。「商売道具」を持って、この辺りをウロウロしている。

被害には遭っていないが、噂で聞いていたおじさんに実際に遭遇した話。

「靴磨き詐欺に気をつけてください」

キルギスの宿で出会った、トルコに行ったことがあるという旅人に、そう忠告された。
靴磨き詐欺はこういう手口らしい。

正面からなにやら道具箱を持ったおじさんが歩いてくる。
すれ違いざまに、彼の商売道具であるブラシを落とす。
「落としましたよ」と教えてあげると「ありがとう、お礼に靴を磨かせてくれ」と言ってくる。
それじゃあ、と靴を磨いてもらうと、料金を請求される。というものだ。

トルコに来るまではそんな手口に引っかかるはずがないと高を括っていた。
だが、タクシーに騙された手前、そういう事には敏感になっていた。

ある時、海沿いの道を散歩していると、すれ違ったおじさんが何かを落とした。
「落としましたよ」と教えて「ハッ」とした。これは例の靴磨きおじさんだ。
そのまますれ違って歩いていると、案の定後ろから声を掛けてきた。
無視して歩いていてもしばらく声が聞こえていたから、そこそこしぶといらしい。
頑として無視を決め込んでいると、ついに声が聞こえなくなった。

遂に諦めたようだった。

少し歩いて振り返ると、他のターゲットの横でブラシを落としているところだった。
今度は落としたことの指摘すらされなかったようで、自分で落としたブラシを拾いに戻っていった。
その様子が面白くて、もうしばらく観察していたかったが、再度絡まれたら面倒だと、その場を後にした。

靴磨き詐欺、事前に聞いていなかったら、もしかしたら引っかかっていたかもしれない。

侮れない国だな、と気を引き締めた。

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